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の秋の大

あの噂のせいではなく

頑大、この男は、面倒臭い事を嫌う頑固者なのだ寰宇家庭
官位や地位には、興味がない。
だが、ここにきて、興味以上の存在が胸の中にいる。
この男のたった一人の女(ひと)・・・ユ・ウンス。
その名を口にするだけで・・・この男の動悸は激しくなり、郷愁が溢れだしてくる。
己の命以上の存在がこの世にいる。
それだけが、この男の唯一の支えだった。

そして、その女人は、離れても尚、この男を守っている。
想像を超えた方法で・・・。

チェヨンは、ウンスの持つ「強さ」と「知恵」を知った。
ウンスの結んだ「絆」の強さも・・・。

「パートナーなんだもの・・・当然よ!」そんなウンスの声が聞こえてくるような気がする。
チェヨンは、ウンスを想わない日はなかった。
ウンスを胸に抱いていなければ、とうに死んでいたかもしれない。

チェヨンを生かし、この国を守っているのは、ウンスかもしれない・・・チェヨンは、そう思っていた。

ウンスは、チェヨンに途轍もない「番犬」を送ってくれた。
ウンだ。 このウン、内功は勿論、気性がウンスに良く似ている。



 ウンは、迂達赤の道場にいた。
トクマンと何やら話している。
トクマンは、先の高郵城攻めの時に、自分の槍の凄さに自分で驚いていた。
槍を持ったトクマンは、敵兵と一度も接近せずに戦った。
槍を使えば・・・トクマンに近づくのは至難の技だった寰宇家庭

「ウン。お前の竜巻・・・凄かったな。テジャンの雷も恐ろしかった。」

「トクマンさん。耳元で話さないでください。息がかかって気持ち悪い。」

ウンは、自分の肩のかかったトクマンの腕を外そうと藻掻いている。
「気持ち悪い」と言われたトクマンは、意地になりウンを羽交い締めにしようとしていた。
そんな二人の様子を冷静なチェモは、黙って見ている。
ここでチェモが入ると、トクマンは、チェモを相手にするだろう・・・。
トクマンは、最近トルベに似てきていて、人と肩を組みたがったり、いまのように若い隊員をからかったりしている。
トルベの真似は、槍だけでいいのに・・・チェモは、密かにそう思っていた。

しかし、ウンは、背が伸びたな。
あの背高のトクマンと差ほど変わらぬではないか・・・あれでもう少し身体が大きくなれば、
テジャンでも勝てなくなるかもしれぬ・・・チェモは、そう感じていた。
だが、どうにかならんか・・・あの長髪は・・・。

ウンは、髷を下ろし、その髪を長く垂らしていた。
自分の肩よりも長く垂らした髪に、額には「鉢巻き」を締めている。
その鉢巻きは、迂達赤の紺色ではなく、漆黒のその中央に赤で「麒麟」の刺繍が施されたものだ。
戦場で、雲剣を両手に馬に跨がり、その髪を風に靡かせる姿は、まさに風神であったが・・・。

高郵で・・・稲光と雷鳴が轟き、落雷で高郵城内が炎に包まれた後、竜巻で城門と城壁が崩れ落ち、竜巻の勢いで道ができた安利傳銷
その竜巻が起こした砂塵のなかから、鬼剣を蒼白く光らせたチェヨン、その隣に雲剣を両手にしたウンが姿を見せたのだ。
それを見た敵兵の顔には、恐怖がはっきりと浮かんでいた。

「高麗の風神と雷神」・・・逃亡した兵も少なくはなかっただろう。

タルタル将軍さえいれば、高郵城は三日も持たなかったかもしれぬのに・・・。

チュンソクは、そんな若い迂達赤達を二階の欄干から見ていた。
この戦が初陣の者も少なからずいたが・・・皆敵に怯むことなく挑んでいた。
まあ、最初にあれを見れば・・・士気が上がらぬわけがない。
チュンソクは、あの場で「内功」の怖さを改めて知った。
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