「父上、本当にあのジャン４世の子供達を保護されるおつもりなのですか？ あの子達の母親は、あの子達をおいて、さっさとイングランドの男の元に行ってしまったのです。殺してしまっても何の問題もないので
邊間補小學數學好はありませんか？ いえ、後のことを考えれば、今殺してしまった方が良いに決まっていますわ！」
見た目は着飾った貴族のマダム風であったが、言うことは非常に物騒な中年女性であった。
「マルグリット、女がそんな物騒なことを簡単に口にするものではないぞ！」
それを聞いていた父親のオリヴィエ・ド・クリッソンは、そう言うと苦笑した。
彼は、ブルターニュのクリッソン城で、クリッソン４世とジャンヌ・ド・ブレビーユの間に生まれ、母がイングランドで再婚したので、イングランドで幼少期を過ごしていた。
そうなる前にはブルターニュに居たので、そこの領主であるジャン４世とも顔を合わせていたのだが。
そういうことがあったからか、オリヴィエはイングランドで育ったにも関わらずベルトラン・デュ・ゲクランの下でフランス軍として戦っていた。その戦いは、年をとり、穏やかになってきた現在からは想像出来ない程苛烈で、オーレの戦いなどでは捕虜をとらず殺していったので「屠殺者」と異名がついた程であった。
ブルターニュ継承戦争で敗れたシャルル・ド・ブロワの嫡男ジャンに嫁いでいた娘のマルグリットは、女性なので戦いに直接関与したことはなかったが、どうやらその苛烈な性格を受け継いでいるようであった。
「そうはおっしゃいますが父上、あの子達の父親は、一度父上を捕えただけでなく、殺そうとまでしたのですよ？」
「戦いとは、そういうものだ。あやつは、イングランド派であったしな」
その「あやつ」であるジャン４世が亡くなって一年
邊間補小學數學好が経とうとしていた。既に６０も半ばを過ぎたオリヴィエは、どこか遠くを見ながらそう言った。
「父上、父上はひょっとして、ご自分も幼い頃、おばあさまにイングランドに連れて行かれたので、そのこととあの子達の今の境遇を重ねておいでなのではありませんか？」
「それも、確かにある。だが、それだけではないぞ」
「それだけではない、とは？」
「騎士としての意地、だな」
少し胸を張ってそう言う年老いた父親に、マルグリットは目を丸くした。
時はまだ中世。確かに、まだ騎士道なるものを重んじる者もいた。その最たる者が、現フランス国王シャルル６世の祖父、ジャン２世であった。
彼の身代金が莫大な額になる為、彼を解放するにあたり、息子のアンジュー公ルイを含む数人のプリンスが身代わりとなったのだが、その一人のア
邊間補小學數學好ンジュー公が逃亡した。すると、ジャン２世は自らロンドンに戻り、再び捕らわれの身に戻ったのだった。その常識的に考えると「ありえない」行動の為、彼は「最後の中世人」と呼ばれたのだった。
